2008年3月11日
吉野葛といえば奈良の特産品のひとつ。ですが、残念なことに県内でもその「葛」のことをちゃんと知っている人は少ないようです。ふだん葛として市販されているのは、サツマイモやじゃがいもを混ぜたものが多いのだそう。

吉野本葛は葛の根からとったデンプンの純正品だけをさすものと決められています。くず粉(葛粉)は、マメ科のツル性多年草の「くず(葛)」の根から抽出される澱粉で“本くずでんぷん”ともいわれ、デンプンの中でも最高級品です!
(ちなみに片栗粉は本来ユリ科の片栗の根からできるのですが、こちらも現在はジャガイモが主原料になっています)

かの谷崎潤一郎も当家に滞在し、「吉野葛」を執筆したそう。
吉野の本葛といえば、「吉野葛本舗・黒川本家」。ここの葛粉は全国の一流料亭や高級和菓子屋さんでは知らない人はないほど有名で、しかも「随一 吉野本葛」という登録商標と特許を取得しているんです。その老舗中の老舗が、尾田組のふれあい回廊「夢しるべ 風しるべ」に出店協力し、新しいお店が生まれます。ともに奈良の歴史と伝統、建築と食文化を受け継ぎ、まさに満を持して、という感じです。そこで今回は、吉野山の北にある宇陀市のお店に行ってきました。

これがその商標“随一”。
この本葛しか使わないという職人さんもいるのだそう。
「吉野葛本舗・黒川本家」は、1615年創業(・・・ということは江戸時代初期)、現在12代目とその息子さんたちが昔ながらの製法を頑なに守り続けていらっしゃいます。お話を伺ったのは、黒川家次男の黒川 健さん。葛にまつわるエピソードから、新たにオープンするふれあい回廊「夢しるべ 風しるべ」のお店までいろいろとお話をきくことができました。
今でも葛づくりには井戸水のみを使い、手作業で行うのだそう。
どっしりとした看板が下がる建物は旧松山地区の有名な町家で、戸をあけて入るとそこには「宮内省御用達」の立派な文字が!

透きとおって、ぷるるんとした葛湯をいただくと、ほんのり上品な甘さでおいしいです。私が小さいとき風邪をひいたときに食べていた「くず湯」とは大違い。粉くさくなく、冷えてもさらさらになりません。葛もちや葛まんじゅう、夏の葛きりってなんとなく京都のイメージがありますが、本当は奈良のものなんですよね。
ふれあい回廊「夢しるべ風しるべ」の1階では最高級の吉野本葛を使った葛きりや葛餅が食べることができます。また葛独特のとろみや白さを利用したスイーツ等も目下開発中だそうです。
吉野仕立てをはじめとする日本料理―――志まづ
二階の日本料理 志まづでは本葛豆腐(ごま豆腐)など、葛を使ったお料理がゆっくりいただけるそうです。日本料理では葛を使うことを「吉野仕立て」と呼びますが、ここでは本葛100%のおいしさが味わえます。また、奈良県内の大和肉鶏や大和野菜など地場の食材を使ったメニューが自慢なのだとか。
おまけ
せっかくなので黒川本家の吉野葛についてもう少し詳しく・・・。

大和連山の山奥に自生する葛の根を掘り起こし、繊維を砕いて取り出したデンプンをまる二日間晒(さら)し、あくの出た水を捨てつつ、沈殿したデンプンを集めて、さらに冷たい井戸水で晒します。これを寒晒しといい、数回繰り返したあとで、奈良盆地ならではの寒さと風にさらして風干しにするのだそう。その結果1kgの葛の根から葛粉は100gほどしかできないのだとか。(ほかのデンプン粉と違ってお値段が張るのも納得です) 正真正銘の葛粉(極寒晒し)は、固まりがとても堅くてブロックの角もしっかりしています。くず湯にするとその味は歴然です。

葛の根から取れるデンプンには発汗・解熱・血行促進などの作用があり、平安時代から薬用されてきました。漢方の風邪薬「葛根湯」の原材料にも使われていて、それからとれる葛粉も健康食品として見直されています。
またマメ科なので、イソフラボンも含まれており、美容はもちろん骨粗鬆症や更年期障害、乳がん等の女性疾患にも効果的なのだそうです。


